This article (which is also published in the Electronic Bodhidharma No. 3) takes up some issues related to multilingual computing on various personal computer hardware and software platforms. A more recent article of this series was published in No. 4 of the same journal (1995).
多言語の工場から 我々はまだ、コンピュータが紙やインクと同じくらい融通がきいてくれたらと、夢見ている状態である。どんな言語も使え、見知らぬ文字に出くわしても立往生しないコンピュータ……。悲しいかな、その日はまだやってきてはいない。電子達摩の読者諸賢からいただいた手紙のいくつかは、私がアップルのコンピュータを「熱心に推奨する」のに対して、いまだにIBMコンパチにひっかかっていて申し訳ない、といっておられる。何も申し開きする必要はない。私の机の下には、三つのマシンが平和共存しており、それぞれが、なんらかの必要性に応じている。これら フ必要性がどのようなものであるか、そしてそれぞれの機械のできること、できないことを、以下に説明しよう。 1)NEC9801コンパチ 10年以前、かつて、このようなマシンが驚異であった時代があった。6353字のJISコードの漢字全体を処理することができ、ワードスターの日本語強化版であるツインスターは、同一文書内で英語と日本語を同時に、文の端をきっちりそろえて、使うことができた。しかし、ドイツ語、フランス語、中国語など、他の言語に関しては、様々な工夫を凝らさなければならなかった。自分専用の文字を作成したり、プリンターの盲点を逆手に使ったり、他のソフトとの互換性、適合性が全くない奇妙なソフトを利用したり……。 残念ながら、状況は少しも変っていないのである。9801マシンは「より高速」にはなったが、フランス語の簡単なアクセントさえ、ひどく不自然なやりかたをしない限り、付けることができないし、中国語にいたっては、論外である。中国語の「お元気ですか」(ni hao ma)に相当する三文字のうち二文字が、JISには含まれていない。 日本のパソコンにおける二つの広くゆきわたった標準であるJISとNECー9801マシンという組み合せは、図書館員や、多言語を使っている戦士たちを仰天させる。要するに、ハードとソフトに関して、十年間たっても状況はほとんど変っていないのであり、この反多元語同盟軍の二大構成員が、ともに消えてゆくのを目の当たりするのは、かなり早いことかもしれない。9801マシンは、いま、ウィンドウ最前線において、最後の戦闘に入ろうとしているが、すでに、より柔軟な構造とオペレーティング環境を持つIBMの複製マシンやアップルに遅れをとりつつある。 私は9801コンパチを、ソフト開発やユーティリティの仕事、OCRによるちょっとした漢字入力、それに京都大学で使われている非常に奇妙なビットネットのインターフェースに接続するために使用している。言語処理やその他の生産的な仕事に、このタイプのマシンを用いることは決してない。 2)IBM PCコンパチ DOS/V(ドス・ヴィーと読む)環境は、IBM日本のMS―DOSヴァージョン5の日本語使用が可能なもののことである。このシステムソフトを購入し、インストールすることにより、英語(通常の英語DOS)から日本語モードへと切り替えることができるようになる。ハードを追加する必要は全くないが、日本語モードの利点を生かしたいなら、DOS/Vコンパチのソフトを購入しなければならない。 現在では、DOS/V 上でマイクロソフトの日本語ウィンドウズ3.1をインストールして、見栄えのするトルータイプの出力を生成することもできる。しかし、これは私がこのマシンを使っている主要な理由ではない。このマシンは台湾製のソフト、ETENを動かすことができるが、このソフトは英語のDOS環境を修正して、BIG5の文字を入力できるようにするのである。また、中国語のウィンドウズを動かすこともできるが、ETENはまだこれについてはコンパチではない。 このマシンは必要なら、アダプテックのスカジーボードを装着することにより、マッキントッシュ用に購入したオプティカル・ドライブとCDーROMにアクセスすることもできる。このように、このマシンは非常に柔軟であり、ソフトもたくさんあるが、私はこれをもっぱらBIG5コードの漢字データの高速ライン検索用と、大規模なテキストファイル・データベースの処理用に使っている(マッキントッシュのソフトが非常に苦手とするもの)。 どうして、言語処理やデスクトップ・パブリッシングの仕事をIBMの複製機上で行わないか。それはマシンの責任ではなく、ソフトのせいである。もっと正確にいうと、オペレーティング・ソフトのせいである。日本語DOS/Vは中国語を処理しないし、韓国のソフトは日本語がだめ、中国語のウィンドウズはETENや日本語がだめ、といった具合なのである。前評判の高いウィンドウズNTはまだ発売されていないが、多言語のアップルシステムソフトで得られた経験から判断するに、@眼を覚まして、本当に多元語のやりかたで動くようになるまでには、しばらくかか 驍セろうし、ABIG5の漢字と隣接した日本の漢字を呑みこまねばならぬときに、喉を詰まらせることのないようなNTコンパチソフトが現れるまでには、長い間待たねばならないということを、あらかじめ覚悟しておかねばならない。何十というプリンター・ドライバーを書かなければならぬ人々に幸運あれ。 3)アップル・マッキントッシュ ワールドスクリプトI(アラビア語など)とワールドスクリプトII(中国語、日本語、韓国語)を装備したシステム7.1が手元にあるが、英語のシステム7.1ソフトの中にこうした言語環境を簡単にインストールすることを可能にするはずのこの道具一式のうち、私が確認したのは日本語だけである。私は、このニュースレター?をマッキントッシュ上で、中国と日本の両方のフォントをインストールした英語の7.1システムを使って書いている。操作はいつも明解というわけではないが(ややこしいメッセージなど)、そのアプローチは前途有望であるように思われる。 しかしながら、このような混合言語をうめき声なしに処理できるような高性能ワープロソフトがない。マーキュリー・ソフトウェア(ソロライター)は、残念なことに、日本語版から中国語を除外したままにしておくことを決定したが、本格的な多言語ワープロ、ナイサスのコピープロテクト版が近々に公開されるという話である(コピープロテクションは、飛行機の座席などに紛失してしまいそうな差し込みプラグの形になっている)。ワードパーフェクトもまた、ワールドスクリプトと真にコンパチな製品を開発しているという。実際、どうしてみんなそうしない のだろうかと不思議である。 大部分のワープロソフトがいまだにより興味ある言語(特に極東言語の混合体)に対して問題を生じている一方、ジョリライトのようなエディタや、古典的なハイパーカードが、通常、吠えつきもせず、与えられたものをそのまま受け入れている。忠実な犬たち! 私は、スクリーン上であれ、紙上であれ、出力に関することはすべてマッキントッシュを使用している。ハイパーカードとハイパートークは多くの日常的な仕事に対して、卓越した働き手であり、ソロライター(ヴァージョン1.3.2)は「脚注表示のまずさや脚注内の索引が作成できないなどの欠点にもかかわらず」、いまもなお、西洋の言語やサンスクリットの分音符合とともに使用できる日本語のワープロソフトとしては、最高のものである。 混合言語環境において、驚嘆すべき出力を得たいと望まれるむきは、ヒューレット・パッカード社の4メガ・ポーストスクリプト・プリンター(約2000ドル)に注目すべきである。これは、アボード・タイプマネージャ(日本語版)と大きなフォントキャッシュを設定することにより、非常に美しい600×600DPIのテキストを作成できる。全漢字テキストの場合、速度は遅いが。 当座の手段 ★自己専用の高品質のポーストスクリプト漢字を作成し、アップルNTXーJあるいはその他の日本のポーストスクリプト・プリンターを使用したい人には、東京のエンフォー・ラブ(**)が「漢字サック」というプログラムを発売している。このプログラムは、文字どおり、プリンターのハードディスクから漢字フォントをサック(吸い取る)し、それらを様々なフォーマットで保存することを可能にする(このためにはアルトシィスのメタモーフォシスが必要)。そこで、これらの文字をフォントグラファーで編集し、自分専用の外字セットを作成することができる。 アれを正当に実行し、600DPIで印刷した場合、自分で作った文字とJISの文字とを区別することは、誰にもできないだろう。もちろん、よりよい漢字コードこそ、望ましい解決策であることは、いうまでもないのであるが……。 ★検索プログラム「リトリーヴァー」は、日本語システムで動作するアップル上で使用できるように修正され、「検索君」と改名された。これは、多言語システムにおけるBIG5テキストに対しても機能するが、メッセージとメニューは、だめになってしまうかもしれない。しかし、操作は非常に簡単なので、これはたいした問題にはならない。検索君は、いくつかの可能性を付加してフルテキストを検索でき、非常に高速である。マッキントッシュのクォドラ上の高速クァンタム・ハードディスクでは、大体1メガバイトにつき1秒の平均であった。よりよい構成や表示 可能性があれば、大歓迎である。 ハードに対する助言 数カ月ごとにより高速で、よりよいマシンが発売される状況で、学者はこれらの事物を自己の展望のもとにおさめるべく、悪戦苦闘しなければならない。書き手にとっては、マシンの生の速度は、さして重要なことではない(ただし、グラフィックスを使用したデスクトップ・パブリッシングを扱う人の場合は、必ずしもそうとはいえないが)。どんなマシンでも人がタイプする速度にはついてゆけるし、バックグラウンド印刷を使えば、印刷中でもタイプを続けることができる。私は、コンピュータ購入の助言を求める人々には、「音楽再生装置のことを考えるべき だ」といい続けている。 どうして、毎年、より強力なアンプを新規に購入する必要があるのか。自分の必要に見合っただけの充分強力なアンプを手に入れれば、次にはアンプではなく、高性能のプレーヤーやスピーカーにお金を使うべきだ。コンピュータ用語でいうなら、高性能の入力機器(大容量で高速なハードディスク)と出力装置(大画面で高質のスクリーン、よいプリンター)である。 ある種の高信頼性信奉者は、より大きなワット数を求め、ある種のコンピュータ信奉者は、より高速なマシンを求め続ける。しかし、私なら、眼を痛めない二頁のスクリーンと、大量のデータを高速に収納し、またそれを取り出すことのできるハードディスクを手に入れるだろう。