日本語組版における禁則
- 禁則がある理由
終わり括弧類や句読点は、文章の意味上の構造を視覚的に支持するという目的において、その前の文字または文字の並びに「付いて」いるものと考えられます。
このように「付いて」いるものが行末と行頭に分かれてしまってはおかしいということです。
行末に位置してはならない文字(始め括弧類等)の場合も同様です。これらは次の文字または文字の並びに「付いて」いると解釈できます。
「基本日本語文字組版」
- 行頭禁則文字
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くり返し符号(ヽゝ々)
ー(音引き) 拗・促音 ・(中黒)
「ページネーションのための基本マニュアル」
縦組の場合、句読点、受けの括弧類、ミニット類、記述記号、踊り字や大返し、中黒、拗促音小字、音引などである。
横組の場合、テン、マル、カンマ、ピリオド、受けの括弧類やクォーテーション・マーク、ミニット類および記述記号、踊り字、中黒、拗促音小字、音引きなどである。
「組版原論」
終わり括弧類。
句読点、疑問符、感嘆符等。
ピリオド、カンマ、コロンおよびセミコロン。
繰り返し記号。
音引き。
中黒。
小書きの仮名。
「基本日本語文字組版」
- 拗促音と音引の行頭禁則
QuarkXPressでは拗促音小字や音引は行頭禁則の対象からはずされており、禁則対象の範囲を選択することもできない。
「組版原論」
小書きの仮名や音引きは、前の文字と付いて一音をなしていますので、本来これを分離することは好ましくありません。
けれども、これらを行頭禁則とすることによって発生する字間調整過多は、前者よりもさらに好ましくないという判断もなされるわけです。
「基本日本語文字組版」
- 行末禁則文字
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「ページネーションのための基本マニュアル」
縦組の場合、起こしの括弧類やミニット、パーレン類などである。
横組の場合、起こしの括弧類やミニット、パーレン類、アポストロフィ、それにクォーテーション・マークなどである。
「組版原論」
始め括弧類
「基本日本語文字組版」
- 分離禁則
…… ――などのつなぎケイ。
数字、および数字と単位記号類。
タテ組和文本文中の、小数点表記(二・三八ミリ)や「二、三の事柄」などの数字列。
数字と単位記号。
「ページネーションのための基本マニュアル」
縦組の場合、大返し、二倍リーダー、二倍ダッシュ、グループ・ルビ対象文字、一まとまりの数字などがある。
「組版原論」
時折、分離禁止と分割禁止とを混同した記述を見かけますが、厳密にいえばこれは誤りです。なぜなら、分離禁止は分割禁止の概念を含みますが、逆に分割禁止は分離禁止を含まないからです。
分離禁止の対象となる文字列ですが、これには連続する三点リーダー・二点リーダー・ダーシおよび連数字があげられます。
縦組の場合はこれに大返しが加わります。
「基本日本語文字組版」
分割禁止とは、ある特定の文字列を行末で分割してはならないとするものです。分割禁止の対象となるものは以下の通りです。
分離禁止文字列。
欧文単語(本来は分離禁止)。
連数字と単位記号。
前置省略記号と連数字。
連数字と後置省略記号。
「基本日本語文字組版」
- 年号の分離禁則
年号は、下2けたでの改行を許す。
漢数字表記のときも同様である。
「ページネーションのための基本マニュアル」
一纏まりの連続数字は分離してはならない。
一部の媒体では、横組の「1993年」の連続数字の途中で分離したり、はなはだしきは「23万4500円」の、例えば「4」と「5」の間で分離し、恬然として恥じないなどという代物があったりする。
これが本当の恥知らず、論外以前と申すべきであろう。
「組版原論」
例外として年号の後ろ二桁は分割を許すこともあります。
「基本日本語文字組版」
日本語組版における行末調整
- 追い出しか追い込みか
通常の書籍の場合にはまず、「追い出し」処理とするのが一般的であろう。
「組版原論」
こと本文組版に限っていえば、やはり追い出しによる調整がよいようです。
理由の第一は追い込みを行うと、大抵は括弧類の前後や句読点の後ろの空きが詰めの対象となり、詰まり気味の窮屈な組み方になるからです。
そして、その分読みやすさが損なわれます。
なぜかといいますと、こうした詰まり気味の窮屈なテキストは、文章を追う視線の流れにぎくしゃく感を生じさせるからです。
もうひとつの理由は、仮に追い込みを基本とする調整を選択しても、詰めが不可能な行では結局追い出しを行わざるをえなくなるということです。
その結果、追い込み行と追い出し行が混在するという事態が発生します。
「基本日本語文字組版」
- 追い出しの方法
写植ないし各種電子組版では、各字間を均等に空けて「追い出し」処理を行う。
程度の低い手働写植の場合、一行中の特定の部分のみに字間詰めや字間空けを施したものを散見するが、およそ論外である。
「組版原論」
追い出しによる調整のために字間を原則よりも空けてよい箇所とその程度、および優先順位は次の通り。
- 欧文の語間(原則三分、最大二分)
- 和文と欧文の間、和文と連数字の間、単位記号と和文の間(原則四分、最大二分)
- 和文の文字間(原則ベタ)
字間を原則以上に空けてはならない箇所を示します。
これらの文字間を調整の対象とすることはできません。
- 欧文の文字間(原則ベタ)
- 句読点類の前(原則ベタ)
- 句読点類の後ろ(原則二分)
- 括弧類の内側(原則ベタ)
- 括弧類の外側(原則二分、連続する場合はベタ)
- 中黒の前後(原則四分)
- 疑問符、感嘆符の後ろ(原則全角、ただし横組の場合は二分)
- 段落はじめの字下げ量(原則全角)
- 字下げによる空き量
- 分離禁止文字間
「基本日本語文字組版」
- ぶら下げ
「ぶら下げあり」の組版には、常に行末句読点をぶら下げる方式と、そうではない(行によって、ぶら下がったり、ぶら下がらなかったりする)方式がある。
われわれは本文一行当たりの字詰めが十分に――三十字以上ある場合、原則として、すべての行末句読点をぶら下げる方式を取る。
一行当たりの字詰めが十分にない本文の場合には、この方式のぶら下げ組みを選択すべきではない(その場合は基本的にぶら下げなしとすべきである)。
「組版原論」
ぶら下げ組みで問題となる点のひとつに、ぶら下げる必要のない行末の句読点、すなわちちょうど行末に収まった句読点の扱いがあります。
このような句読点をそのままにした場合、ぶら下げの対象となった句読点との位置が揃わず体裁が悪くなります。
そこで、句読点がちょうど行末に位置した場合には、あえて調整を行い、他のぶら下がった句読点との位置を揃えたほうがより場合もあります。
ただし、行長が短い(字詰数が少ない)ときには注意が必要です。
少ない字詰数でこのような調整を行うと、字間が大きく割られかえって読みやすさを損なうおそれがあるからです。
「基本日本語文字組版」
ルビ
- ルビ組版の基本的考え方
ルビ組版の基本的な考え方は、親文字群内およびその前後の字間を空けすぎず且つ誤読を防ぐように組むということです。
「基本日本語文字組版」
- モノルビかグループルビか
モノルビを基本とする。
「ページネーションのための基本マニュアル」
以下のふたつの方式が考えられます。
- 原則を対字ルビとし、対字ルビが不可能もしくは不適切な場合のみ対語ルビとする。
- 原則を対語ルビとし、個々の親文字とルビ文字の対応を特に明確にしたい場合のみ対字ルビとする。
「基本日本語文字組版」
- ルビかけ
漢字1文字に対して3文字以上のルビがつく場合、誤読しない範囲で隣接文字にかかってよい。
行頭、行末の時も、親文字は固定とする。
「ページネーションのための基本マニュアル」
モノ・ルビの数が多くて対象の漢字からはみ出す場合、
前後の仮名にはルビ半角(本文四分)分までは掛かってもよいが、他の漢字に掛かってはならない。ただし同一熟語のうちでは、ルビ半角分のみ別の漢字に掛かってもよい。
「組版原論」
ルビかけのルールにはさまざまなバリエーションがあり且つそれぞれの長短がありますので、とても一つにまとめることはできません。
「基本日本語文字組版」
- ルビにおける拗促音
ルビには拗・促音を使用しないのを基本とする。
「ページネーションのための基本マニュアル」
写植の場合、拗促音小字のルビも存在している(が、われわれは用いない)。
「組版原論」
ルビでは拗促音等の小書きの仮名を用いない。
ただし、幼児・低学年向けの書籍などでは例外もある。
「基本日本語文字組版」
- ルビの書体
ルビ書体は、使用和文ファミリーのうちウェイトの軽いものを使う。
「ページネーションのための基本マニュアル」
ゴシックによる組版であっても、ルビには一般に明朝体系の仮名を用いる。
「組版原論」
親文字がゴシック系の場合でもルビには明朝系のものを使います。
「基本日本語文字組版」